ソナタ形式

ソナタ形式は映画や小説で例えると120%わかる!クラシック音楽の楽しみ方

ソナタ形式のイメージ画像

ソナタ形式の構造を、映画や小説の構成を例にしてわかりやすく解説!クラシック・コンサートが10倍楽しくなります♪

ベートーヴェンの「運命」やチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」など、クラシックコンサートで定番の曲の多くには、「ソナタ形式」という作曲技法が使われています。

ただ、ソナタ形式を調べても、「提示部・展開部・再現部からなる…」などと説明されていて、それに何の意味があるのか なかなか理解できないものです。

結論だけを端的に述べるとすれば、ソナタ形式とは、「12種類の高さの音を組合せて音楽にストーリーを持たせるための型のこと」なのです。

映像作品や小説などに様々なストーリーがあるように、西洋音楽にも元気の出るもの、宗教的なもの、悲惨なものなど、様々な音によるストーリーがあります。

実は、これらのドラマは、物語の登場人物に当たる「主題」と、物語のターニングポイントに当たる「調の変化」によって生み出されているのです。

ぜひこの記事でソナタ形式のイメージをつかみ、これまで以上にクラシック音楽を楽しめるようになっていただければ本望です!

ソナタ形式とは?ソナタ形式の意味と意義をわかりやすく簡単に

まず、「ソナタ形式」とは、(声楽曲ではなく)器楽曲を表す「ソナタ」の、複数の楽章のうちの第1楽章に共通して見られる「型」のことです。

ソナタとソナタ形式ソナタ形式は、ドイツの作曲家・音楽理論家のマルクスが、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンなどの作曲家たちが、楽器によって演奏される楽曲(=ソナタ)の第1楽章に共通の「型」を使用していることを指摘したのが、始まりでした。

それ以降、このソナタに共通して見られる形式のことは「ソナタ形式」と呼ばれるようになりました。

つまり、ソナタ形式とは、器楽のための楽曲に見られる共通点を理論的に分析して定義したものだったのです。

ソナタ形式では、弾き始めの序奏部や楽曲を締めくくる終結部(コーダ)などを除くと、おおむね以下のような構成を持つことが発見されました。

ソナタ形式の一般的な構造ソナタ形式は、大きく分けて3つの部分で構成されています。

それぞれの部分は、始めから「提示部・展開部・再現部」と呼ばれています。

しかしながら、楽曲がこのような構造を持つことに、果たしてどのような意味があるのでしょうか?

言い換えれば、何のためにソナタ形式という共通の型が用いられるようになったのでしょうか?

その答えは、「音楽にストーリーをつくり出すため」です。

小説には、「言葉」があります。映画には、「セリフ」や「人物」があります。

そして、同じ音楽では、オペラには「人物」と「歌詞」があります。

しかしながら、楽器のみで演奏するソナタには、「音」しかありません。

このような「音」のみのソナタにストーリーをつくり出すために生み出された「型」こそが、ソナタ形式だったのです。

ソナタ形式の「提示部・展開部・再現部」は文章の「起承転結」や映画の「三幕構成」のようなもの

少し視点を変えて、文章や映画などの例で考えてみましょう。

たとえば、文章によく用いられる「起承転結」は誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

起承転結は、文章にストーリーを生み出すための型です。

以下は、起承転結を説明したウェブサイトの、桃太郎の具体例の引用です。

起 桃から桃太郎が生まれた
承 鬼が島で鬼が暴れているので、仲間を集めて
転 鬼が島に乗り込み、退治する
結 金銀財宝をもって村へ帰還する

――StoryMaker「起承転結の例 よくわかる例文10個」より抜粋

桃太郎の画像

いかがでしょうか?「起」で物語の設定が示され、「承」で物語が動き出し、「転」で緊張感が高まり、「結」で物語が落ち着く、という流れに沿うことで、わかりやすい物語が生まれていることがわかりますね。

同じように、映画にも、ストーリーづくりのための型が存在します。

それは、「三幕構成」と呼ばれるものです。

三幕構成は、起承転結よりは使われる頻度の少ない言葉なので、簡単に意味を説明します。

三幕構成とは、「設定」「対立」「解決」という3つの部分で構成することによって、物語にドラマを生み出す構成方法です。

以下は、三幕構成を解説したウェブサイトからの引用です。

【第一幕】主人公の置かれている状況や物語の舞台について説明する。
【第二幕】目的に向かって進んでいく主人公の苦悩や葛藤を描く。
【第三幕】主人公が問題を解決する。
――かくかく語りき「シド・フィールドの脚本術を参考に【三幕構成】をわかりやすく解説!」より抜粋

三幕構成は、おおむね以上のような内容の構成になっています。

そして、以下は三幕構成から見た「アナと雪の女王」の具体例です。

1) 姉のエルサ(声:イディナ・メンゼル)と妹のアナ(声:クリステン・ベル)は、王家の美しい姉妹で、仲が良かったが、エルサの魔法でアナが危険な目に遭い、エルサはアナを避けることとなった。
2) エルサは戴冠式で、アナの婚約に反対したことで、アナと口論になる。そのことで人々に自分の魔力を知られてしまったため、ショックを受けたエルサは雪深い山奥に閉じこもってしまう。その一件で、王国は雪深い冬に閉ざされた。
3) アナは、クリストフと雪だるまのオラフに助けてもらいながら、エルサとのわだかまりを解き、王国には再び平和が戻った。
――1分でわかるネタバレ『「アナと雪の女王」あらすじ・ネタバレ』より抜粋

いかがでしたか?「起承転結」と「三幕構成」…どことなく似ていますね。

そして、ソナタ形式も、音楽にストーリーをつくり出すための型であり、「起承転結」や「三幕構成」と似たような構造になっているのです。

図にすると、以下のようなイメージです。

ソナタ形式とストーリー構成の画像ソナタ形式の「提示部・展開部・再現部」という構造に近いのは、三幕構成でしょう。

「提示部」が設定に、「展開部」が葛藤に、「再現部」が解決に当たると考えるとわかりやすくなります。

ソナタ形式における「登場人物」と「ターニングポイント」とは

ところで、映画や小説などには欠かすことのできない要素があります。

その1つが、「登場人物」です。複数の登場人物が相互に関わることによって、シナリオにストーリーが生まれるのです。

物語に欠かせないもう1つの要素は、「ターニングポイント」です。

ターニングポイントは物語の変わり目のことで、ターニングポイントがあることで物語の雰囲気や展開がガラッと変化します。

そして、実はソナタ形式にも「登場人物」や「ターニングポイント」に当たる要素があるのです。

それは、「主題」と「調」です。

ソナタ形式の「主題」が物語で言うところの登場人物であり、「調」が変化する「転調」が三幕構成の「ターニングポイント」に当たります。

実は、ソナタ形式では「主題」と「調」が変化することによって、楽曲にストーリー性を生み出しているのです。

ソナタ形式の登場人物=「主題」

まずは、「主題」の変化について見ていきましょう。

そもそも、主題とは何かと言われれば、ひとまとまりの旋律(=メロディ)のことです。

ソナタ形式について調べていると、「動機」や「主題」といった言葉が出ますが、おおむね以下の図のようなイメージです。

動機と主題の画像

「動機」が旋律のまとまりの最小単位であり、それより上位のある程度のまとまりのことを「主題」と言います。

そして、ソナタ形式の展開部においては、最初に「第1主題」と呼ばれる主題が登場します。

これは、物語で言うところの主人公のような役割の登場人物です。まずはドーンと楽曲のメインとなる主題が提示されるのです。

第1主題に続いて、提示部には「第2主題」と呼ばれる主題も登場します。物語で言うところのヒロインやボス敵のようなイメージです。

第2主題は、一般的には第1主題と対照的な性格を持ちます。物語で言えば、男性と女性、もしくは正義と悪、などをイメージしてください。

提示部で2つの主題が示された後、展開部では2つの主題が、時に相互に作用しながら、様々な形で変化していきます。

展開部は主題が劇的に変化する部分であり、作曲家の腕の見せ所とよく言われます。主人公とボスが戦ったり、主人公とヒロインが交わったりしているイメージでしょうか。

そして、展開部で大きく変化した2つの主題は、最後の再現部で再び提示部の主題へと戻り、物語は終わりへと向かいます。

もちろん、展開部のドラマを経た後なので、再現部の2つの主題は提示部の2つの主題から何らかの形で変化しています。

以上が、ソナタ形式における登場人物=「主題」の変化の大まかな流れです。

ソナタ形式のターニングポイント=「調」の変化

続いて、ソナタ形式のターニングポイントに当たる、「調」の変化について見ていきましょう。

そもそも、「調」とはどのようなものなのでしょうか?

「ト長調」や「イ短調」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、あれらが「調」を表す言葉です。

恐らく、音楽で最もわかりづらい概念の1つなのではないでしょうか。

調は、英語ではkeyと呼ばれるものです。カラオケなどで「キーを上げる」などと言う時の、あのキーのことです。

ここでは詳しい説明はしませんが、単純化して言うと、調は以下の①・②の組み合わせによって決定されます。

  1. 「ド・ド♯(レ♭)・レ・レ♯(ミ♭)・ミ・ファ・ファ♯(ソ♭)・ソ・ソ♯(ラ♭)・ラ・ラ♯(シ♭)・シ」の12種類の音のうちどれが主役の音(=主音)か
  2. 「長調」(明るい感じ)か「短調」(悲しい感じ)か
調のイメージ画像
調とは│調(音楽用語)の意味や種類、名称を決める規則について 【調】 調とは、楽曲における主音が何であり、長音階と短音階のどちらが用いられているかを表す言葉である。 楽曲は、主音(=...

ソナタ形式では調が変化しますが、調が変化することでいったい何が起こるのでしょうか?

実は、調は楽曲の「雰囲気」をつくっています。

調が変わることで、陽気な感じになったり、厳かなイメージになったり、物悲しげな雰囲気になったりするのです。

そして、ソナタ形式では、調が変化する「転調」が頻繁に行われます。

この「転調」が、物語における「ターニングポイント」に当たるものであり、転調によって音楽の雰囲気が変化します。

調には複数の種類があり、ある調と関係の近い調もあれば、関係の遠い調もあります。

ソナタ形式においては、最初に提示された調がホームの調(=主調)となります。

そして、提示部の第2主題で関係の近い調(=近親調)へ、続く展開部でだんだん遠い調(=遠隔調)へ行き、最終的にまたホームの調(=主調)へと戻っていきます。

実は、調はホームの調から離れた調に行くほど、緊張状態が生まれます。

この調の変化によって生じる緊張が、三幕構成で言うところの「葛藤」を生み出しいているのです。

ソナタ形式の構造と主題・調の変化まとめ

以上のような主題や調の変化を踏まえてソナタ形式の構造を図にすると、以下の図のようになります。
※サイズの都合上縦向きになっています。

簡易版ソナタ形式の構造

また、文字で構造的に見やすく表すと、以下のようになります。

  • 第1部分―提示部
    ▲主題―第1主題→第2主題
    ▲調—主調→近親調(長調:属調 短調:平行調)
  • 第2部分―展開部
    ▲主題―第1主題と第2主題の様々な変化
    ▲調—近親調→遠隔調→近親調
  • 第3部分―再現部
    ▲主題―第1主題と第2主題に戻る
    ▲調—(近親調→)主調

楽器演奏のための楽曲(=ソナタ)には、映画や小説のように視覚的なものが登場しません。オペラのように人間が登場することもありません。

したがって、「音」だけで聴衆を引き込むようなストーリーをつくり出す必要がありました。

そして、偉大な作曲家たちの試行錯誤の上に生まれた「音のストーリーづくりの型」こそがソナタ形式だったのです。

ソナタ形式という物語の登場人物は「主題」であり、ターニングポイントに当たるのが「調の変化」(=転調)です。

これからオーケストラなどの器楽曲を聴く際には、ぜひ「主題」や「調」の変化に着目してみてください。

きっと、今まで以上にクラシック音楽を楽しむことができるようになっているはずです!!

なお、以下には、楽式の専門書や海外のソナタ形式に関するウェブサイトなどを引用しながら、ソナタ形式の各論についてさらに詳しく説明しています。あわせてぜひご覧ください!

参考文献・サイト

【本記事は参考になりましたか?】

少しでもお役に立てたのであれば、気軽にシェアしていただけるとうれしいです♪