ソナタ形式各論

ソナタ形式の本質は「主題」と「調」の変化にあり

ソナタ形式の主題と調・イメージ画像

ソナタ形式の「提示部・展開部・再現部」という構成を理解するための本質は、「主題」と「調」の変化にあります!

ソナタ形式は「提示部・展開部・再現部」から成る…などと説明されても、よくわからないと思ったことはありませんか?

実は、ソナタ形式を理解するためには、形式だけではなく、ある2つの変化が起きていることを知る必要があります。

ソナタ形式において変化するのは、「主題」と「調」と呼ばれるものです。

今回は、「主題」や「調」とはどのようなもので、それらがソナタ形式の中で一般的にどのように変化しているのかをできるだけわかりやすく解説します!

ソナタ形式は音楽にストーリーを生み出すための型である

クラシックの音楽で有名な「運命」や「第九」などの楽曲には、「ソナタ形式」という構成方法が用いられています。

ところが、ソナタ形式とは「提示部・展開部・再現部」を持つ…などと説明されても、いまいちイメージがつかみにくいものです。

しかし実は、ソナタ形式をそんなにむずかしく考える必要はありません。

ソナタ形式とは、文章の「起承転結」と同じようなもので、器楽の楽曲(=ソナタ)にストーリーを持たせるための型のことなのです。

ストーリーというものを考えるにあたって、映画の例を考えてみましょう。

映画では、まず主人公が登場します。それから、悪役やヒロインなどが登場します。

そして、お姫様がさらわれたり、敵を倒したりといった出来事が起こり、展開がガラッと変わります。

登場人物が変わらず、何も事件が起きなかったら、物語として何もおもしろくないですよね?

つまり、映画のストーリーを盛り上げるのは、登場人物や出来事なのです。

そして、音楽において、登場人物や出来事のような役割を果たすのが、「主題」と「調」なのです。

主題はソナタ形式の登場人物

ソナタ形式の構成要素の1つは、「主題」の変化です。

では、主題とはいったいどのようなものなのでしょうか?

以下はArtopium's Music Dictionaryという英語の音楽辞典からの引用です。

A melodic figure or phrase that is the basis for a composition or a section of a composition.

楽曲や楽曲の一部分の土台となる旋律の形態もしくは旋律のまとまり。

――Artopium's Music Dictionary "Music Term: Theme"より抜粋・翻訳

旋律とは、メロディのことであり、つまるところ、主題とはまとまったメロディのことを指しているのです。

ソナタ形式=物語をつくる型 において、主題(=メロディ)は登場人物のようなものです。

最初に主人公が登場し、その後に主人公とは異なった登場人物が登場することにより、物語に変化をつけているのです。

この主題の変化については、オンラインミュージックスクールのLIBERTY PARK MUSICの説明が良くまとまっているのでご紹介します。

A sonata-form movement is dramatic because it contains at least two contrasting themes. Listeners follow the two themes, primary and secondary (or main and subordinate), through their introductory statements in the exposition section, their transformations in the development section, and their restatement in the recapitulation. On the one hand, the three large structural areas of a sonata form typically contain elements of thematic contrast, which elucidates a simpler narrative than the complex contrapuntal techniques of the Baroque period.

ソナタ形式の楽章は、少なくとも2つの対比的な主題を含んでいるために、ドラマティックである。聴衆は、第1・第2の(あるいは主・副の)2つの主題に耳を傾けるが、提示部においては導入の主題提示が、展開部においては主題の変形が、再現部では主題の再提示が行われる。一方では、ソナタ形式の3つの大規模な構造的領域には、典型的には主題の対立という要素が含まれており、その対立が、バロック時代の複雑的な対位法的技法よりわかりやすい物語をつくり出しているのである。
――LIBERTY PARK MUSIC "What is Sonata form?"より抜粋・翻訳

つまり、ソナタ形式においては、性格の異なる2つの主題(=メロディ)が登場し、提示部で2つの主題が提示され、展開部では主題の変形が行われ、再現部で再び主題が元の形を取り戻すのです。

物語においては、登場人物が一人だけではドラマが生まれません。

複数の登場人物が登場し、化学反応を起こすことではじめて観客が惹きつけられる物語が生まれます。

ソナタ形式においても、複数の主題が登場し相互に作用することで、音楽にストーリーが生まれているのです。

調はソナタ形式の雰囲気

ソナタ形式のもう1つの構成要素は、「調」の変化です。

調は、英語ではkeyと呼ばれるものです。そうです、カラオケなどで「キーを上げる」などという時の、あのキーのことです。

調について詳しくは別の記事で説明しますが、単純化して言うと以下の①・②の組み合わせによって決定されます。

  1. 「ド・ド♯(レ♭)・レ・レ♯(ミ♭)・ミ・ファ・ファ♯(ソ♭)・ソ・ソ♯(ラ♭)・ラ・ラ♯(シ♭)・シ」の12種類の音のうちどれが主役の音(=主音)か
  2. 「長調」(明るい感じ)か「短調」(悲しい感じ)か
調のイメージ画像
調とは│調(音楽用語)の意味や種類、名称を決める規則について 【調】 調とは、楽曲における主音が何であり、長音階と短音階のどちらが用いられているかを表す言葉である。 楽曲は、主音(=...

ソナタ形式では調が変化しますが、調が変化することでいったい何が起こるのでしょうか?

実は、調は楽曲の「雰囲気」をつくっています。

調が変わることで、陽気な感じになったり、厳かなイメージになったり、物悲しげな雰囲気になったりするのです。

そして、ソナタ形式では、調が変化する「転調」が頻繁に行われます。

この「転調」が、物語における「出来事」に当たるものであり、転調によって音楽の雰囲気が変化します。

転調についても、オンラインミュージックスクールのLIBERTY PARK MUSICの説明が良くまとまっているのでご紹介します。

On the other hand, however, sonata forms also contain a harmonic narrative of tension–resolution. Harmonically, the goal of the exposition section is to move away from the “home” (tonic) key, which is typically the key of the dominant (V) in major keys and the key of the mediant (III)—which is also the relative major—in minor keys. The exposition, just as it contains more than a single melodic theme, thus contains more than one key area.

しかしながら他方で、ソナタ形式には緊張の緩和による和声の物語という側面もある。和声学的には、提示部の目指すところは、ホームのキー(主調)から離れることにあり、典型的には、長調では属調を、短調ではこれもまた近親調である平行調へと向かう。提示部は、2つ以上の独立した旋律的主題が登場するがゆえに、2つ以上の調にまたがることとなる。
――LIBERTY PARK MUSIC "What is Sonata form?"より抜粋・翻訳

上述の和声とは、ここでは調の変化に関するルールくらいの意味で捉えてください。

調には複数の種類があり、ある調と関係の近い調もあれば、関係の遠い調もあります。

ソナタ形式においては、最初に提示された調がホームの調となります。

そして、そこから最も近い調へ、そしてだんだん遠い調へ行き、最終的にまたホームの調へと戻っていきます。

実は、調はホームの調から離れるほど、緊張状態が生まれます。

小説などでも、主人公が強敵に出会いピンチに陥ったりしますよね?

ソナタ形式では、そのような緊張状態を、ホームから遠い調へと移動することによって生み出しています。

登場人物が複数登場し、緊張が高まり、最終的に緊張が緩和されることで、盛り上がりのあるストーリーへと仕立て上げられているのです。

主題と調の変化を追うことでソナタ形式のストーリーを理解しよう

以上のように、ソナタ形式においては、「主題」と「調」が変化することによって、音楽にストーリーが生まれます。

すなわち、「主題」と「調」の変化を追うことによって、ソナタ形式の持つストーリーを把握できるようになるのです。

いきなり主題と調のすべてを理解することはむずかしいかもしれませんが、主題や調を意識しながらクラシックの楽曲に触れることによって、少しずつでもソナタ形式、ひいてはクラシック音楽に慣れ親しんでいってください!

なお、ソナタ形式の全体的な意味や意義に関しては、こちらの記事をあわせてご参照ください。

ソナタ形式のイメージ画像
ソナタ形式は映画や小説で例えると120%わかる!クラシック音楽の楽しみ方 ソナタ形式の構造を、映画や小説の構成を例にしてわかりやすく解説!クラシック・コンサートが10倍楽しくなります♪ ベート...
参考文献・サイト

【本記事は参考になりましたか?】

少しでもお役に立てたのであれば、気軽にシェアしていただけるとうれしいです♪