音楽

ソナタ形式の一般的な構造は?提示部・展開部・再現部の特徴と違い

ソナタ形式の構造イメージ画像

一般的なソナタ形式の構造はどうなっているのか?大枠(提示部~再現部)とより細かい中身に分けてご紹介!

ドレミ
ドレミ
ソナタ形式の基本的な構造を、主題や調の変化と一緒に確認していきましょう♪

前のページで確認した通り、ソナタ形式では、「主題」と「転調」という2つの構成要素が、音楽に物語を生み出しています。

続くこのページでは、ソナタ形式に共通して見られる構造(提示部・展開部・再現部)を、主題と調の変化とともに見ていきましょう。

ソナタ形式の一般的な構造は?

ソナタ形式の構造には諸説ありますが、どの説にも共通するのは、「提示部・展開部・再現部」という3つの部分があるということです。

その他に、前奏の部分が大規模である場合には「序奏部」、エンディングの部分が大規模である場合には「終結部」(もしくは「結尾部」)と呼ばれることもあります。

しかしながら、ソナタ形式は元々、マルクス氏が主題が提示・展開・再現されることを指摘したものです。

そのため、ソナタ形式の構造の主役は提示部・展開部・再現部の3つであり、終結部はそれらと同等の存在感を持つこともある重要な付属部分であると考えるのが妥当でしょう。

そして、ここからは提示部・展開部・再現部で主題と調がそれぞれどのように変化しているのかを確認しておきましょう。

ソナタ形式の基本の構造はどう説明されている?

まずは、専門書でソナタ形式がどのように説明されているのかを確認しておきましょう。

今回は、貴島 清彦「音楽の形式と分析」、ライヒテントリット「音楽の形式」、門馬 直衛「音楽形式」の3つの書籍から引用しています。

ウイーン古典派のソナタ形式の典型的構造を大きく俯瞰すれば、ほぼ次のように略記することができます。これは一般的なもので、個々の楽曲では相違する面があることと思います

基本のソナタ形式の画像なお、比較的大規模なソナタ形式の楽曲には、提示部の冒頭に序奏あるいは序奏部を置くことがしばしばあり、また再現部の終末が拡大され、終結群あるいは終結部となって独立することもあります。
――貴島 清彦「音楽の形式と分析」p.180より抜粋

新しい古典派のソナタ形式 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの近世のソナタ形式は、ほぼ次の骨子をもっている。

第1部分 諸主題の提示
主調の第1主題、属調への導入、属調の第2主題、即ち副楽節、第3主題、即ち属調の終結主題(Schlussthema)。

第2部分 展開部
第1部分の諸主題から任意に選ばれた動機に基く自由な幻想曲的部分。第1部分よりもずっと広範囲の転調、最後に主調、主題への復帰。

第3部分 再現部
第1部分全体の繰り返し、しかし今度は第2と第3主題は属調ではなく主調にある。コーダはしばしばベートーヴェンの割合に大きい作品におけるように嵩張ったものいなれば、

第4部分
――ともいえるものとなる。第4部分は時に第2の展開部をなし、第2部分に相応することがある。その時は第1と第3部分、第2と第4部分が対になる。

この基本の型は極く一般的なものである。個々のソナタは細かい点で多くは大いに違っている。ソナタ形式は重要であるから個々の要素を詳細に研究することが必要である。
――ライヒテントリット「音楽の形式」p. 105~106より抜粋。

ソナータ形式は、大體、三つの部分から出来ている。

一、呈示部(獨、Exposition, 英、Exposition)――二つの主題その他を提示する部分。

二、展開部(獨、durchführung, 英、Development)——主題その他を展開する部分。自由幻想部とも發展部ともいうことがあるが、それはあまり適當な名稱ではない。この部分は、作曲者の幻想を可成り自由に動かせるが、幻想だけによるものではない。また、主題を發展させるのではなくて、その中に凝結してゐる樂想を展開することを主眼としているのである。

三、再示部(佛、Reprise, 獨、Reprise, 英、Reprise, Recapitulation)——呈示部に出たものを再示するとおと。再現部ともいうが、呈示部に對していうのであるから、再示部という方がいゝ。反覆部という人もあるが、たゞ繰り返すのではなくて、前に出たものを多少變えてもう一度示すところであるから、反覆部というのは、あまり當つていない。

――中略――

ソナータ形式にも、その前に序がつき、その後に結尾が添えられることが少なくない。
――門馬 直衛「音楽形式」p. 137~138より抜粋

いかがでしたでしょうか?だいたい似たような説明がなされています。

これらの3つの定義を踏まえて、ソナタ形式の基本的な構造を抽出していきましょう。

ソナタ形式の全体的な構造│提示部・展開部・再現部

いずれの説明を見ても、「提示部・展開部・再現部」の3つは必ずソナタ形式の大枠に含まれていることがわかります。

ソナタ形式の構造に関して、第4部分として「終結部」(あるいは結尾部)が含まれることがあります。

もちろん、終結部分が提示部・展開部・再現部のような大きさで存在することも少なくありません。

しかしながら、ソナタ形式は元々、ドイツの作曲家であり音楽理論家であるフリードリヒ・ハインリヒ・アドルフ・ベルンハルト・マルクスが、主題が提示・展開・再現されることを指摘したものです。

マルクスが指摘した主題の変化に着目すれば、ソナタ形式の構造の主役は提示部・展開部・再現部の3つであり、終結部はそれらと同等の存在感を持つこともある重要な付属部分であると言えるでしょう。

ところで、ソナタ形式の本質は「主題」と「調」の変化にあることは前のページで指摘した通りです。

ここからは、提示部・展開部・再現部で主題と調がそれぞれどのように変化しているのかを確認しておきましょう。

主題の変化

主題は、提示部で2つのものが提示されます。

まず、第1主題が提示され、その後に第2主題が提示されます。

続く展開部では、一見して全く新しい主題が登場します。

しかしながら、これらはほとんどの場合、提示部の主題を組み合わせたり変化させたりしたものなのです。

そのため、展開部では変化した第1主題・第2主題が登場する、ということです。

全く新しい主題に思えることから、展開部の主題は第3主題と呼ばれる場合もあります。

そして、最後の再現部では、再び提示部で登場した2つの主題へと回帰します。

ソナタ形式では、提示部で2つの主題が示され、それらが変化し、最後には2つの主題へと戻っていくのがスタンダードなのです。

調の変化

続いて、調の変化についても確認していきましょう。

提示部の第1主題の調が、楽曲の基本となる調(=主調)になります。

そして、第2主題では、第1主題と関係の近い調(=近親調)へと転調します。

基本的には、楽曲が長調であれば属調に、短調であれば平行調に転調するのが一般的です。(例外もあります)

続く展開部では、はじめは第2主題と同等の関係の近い調からスタートします。

そして、展開部では主調と関係の遠い調へと次々に転調を繰り返すことで、緊張が高まります。

しかしながら、調の展開は、最終的には再現部で主調へと回帰することを目指しています。

したがって、主調からスタートした調の流れは、いったん主調から遠い調へ行った後に、折り返してだんだん主調へと近づいていくことになります。

展開部の最後には、また主調と関係の近い近親調へと戻ってくるのが一般的です。

そして再現部では、関係の近い近親調を伴うことも少なくありませんが、最終的には主調へと回帰します。

いったん遠い調に行くことで高まった緊張が主調に帰ることで解消され、ソナタ形式という物語は無事に終わりを迎えることができるのです。

ソナタ形式のマクロ構造まとめ

以上を踏まえると、ソナタ形式のマクロな構造は、以下のようにまとめることができます。

  • ―序奏部と呼べる独立した導入部分を伴うことがある—
  • 第1部分―提示部
    ▲主題―第1主題→第2主題
    ▲調—主調→近親調(長調:属調 短調:平行調)
  • 第2部分―展開部
    ▲主題―第1主題と第2主題の様々な変化
    ▲調—近親調→遠隔調→近親調
  • 第3部分―再現部
    ▲主題―第1主題と第2主題に戻る
    ▲調—(近親調→)主調
  • ―第4部分と呼べる終結部(コーダ)をしばしば伴う―

ソナタ形式のより具体的な構造は?

ソナタ形式の大枠を確認したところで、続いてはより具体的な部分について確認していきましょう。

ここでは、提示部→展開部→再現部に分けて見ていきます。

提示部の具体的構成

まず、提示部では、2つの主題(=ひとまとまりのメロディ)が登場します。

最初に「第1主題」が提示され、続いて「第2主題」が提示されます。

そして、第1主題から第2主題へと移る途中には、しばしば移行のための旋律が挿入されます。

このような旋律は「経過句」と呼ばれ、しばしば転調を伴います。

また、第2主題が終わると、提示部を締めくくるための旋律が挿入されます。

この締めくくりの部分は、「小終結」「終結句」などと呼ばれます。別の言い方では、「コデッタ」と呼ばれます。

なお、第1主題が始まる前に比較的長めの導入部分を伴う場合がありますが、そのような部分は「序奏部」と呼ばれます。

展開部の具体的構成

続く展開部では、提示部2つの主題が様々に展開され、転調も繰り返されます。

展開部内の移り変わりは、はじめの方から「第1展開群」「第2展開群」…などと呼ばれます。

第1展開群は、提示部の後半の近親調付近で始まることが多く、進むにつれてより主調から遠い調へと移行していきます。

そして、展開部の最後の部分は「最終展開群」と呼ばれ、再び近親調へと戻ってきます。

再現部の具体的構成

最後に、再現部の細かい構成を確認しておきましょう。

とは言え、再現部は提示部を再提示したものですから、基本的には提示部と同じような構成です。

第1主題が現れ、時に経過句を伴いながら第2主題へと移行し、小終結によって終止します。

時に、独立した部分とも呼べるような終結を伴う場合があり、そのような場合には「終結部」または「コーダ」と呼ばれます。

ソナタ形式の全体像まとめ

最後に、ここまでのソナタ形式の細かい部分を含めた全体像を図として示しておきます。
※サイズ調整のためたて向きになっています。

ソナタ形式の構造

言葉でまとめると、以下のようになります。

  • ―序奏部と呼べる独立した導入部分を伴うことがある—
  • 第1部分―提示部
    ■構成―第1主題→(経過句)→第2主題→(小終結)
    ▲主題―第1主題→第2主題
    ▲調—主調→近親調(長調:属調 短調:平行調)
  • 第2部分―展開部
    ■構成―第1展開群→第2・第3…展開群→最終展開群
    ▲主題―第1主題と第2主題の様々な変化
    ▲調—近親調→遠隔調→近親調
  • 第3部分―再現部
    ■構成—第1主題→(経過句)→第2主題→(小終結)
    ▲主題―第1主題と第2主題に戻る
    ▲調—(近親調→)主調
  • ―第4部分と呼べる終結部(コーダ)をしばしば伴う―

ソナタ形式の大枠は、「提示部・展開部・再現部」という3つの部分から成ります。

そして、提示部・展開部・再現部という名称だけではなく、このページで見てきたように、主題の変化や調の変化もあわせて覚えておくようにしましょう。

この後のページでは、ソナタ形式の解説動画紹介や、ソナタ形式のおすすめ楽曲10選、提示部・展開部・再現部それぞれのより詳細な論点などについてまとめています。あわせてご覧ください♪

提示部における2つの主題の対比・対立について

ドレミ
ドレミ
提示部では2つの主題が対比されると説明されるけど、具体的にどう対比しているのかを説明するよ♪

ソナタ形式の提示部では、対立する2つの主題が登場すると説明されます。

もしくは、2つの主題が対比されているなどと表現されることもあります。

しかしながら、2つの主題が「対立」「対比」しているとは、具体的にどのように異なっているのでしょうか?

今回は、このソナタ形式の提示部における「対立」と「対比」の方法について深堀りしていきます。

提示部では主題が対比・対立している!?

ソナタ形式は、「提示部」から始まります。

何が提示されるかと言えば、主題(=ひとまとまりの旋律)が提示されます。

提示される主題の数は一般的に2つで、第1主題が提示された後に、第2主題が提示されます。

そして、ほとんどの場合、第1主題は第2主題と対立している、もしくは、第1主題は第2主題と対比されている、などと説明されます。

たとえば、以下は貴島 清彦「音楽の形式と分析」から引用したものです。

完成された副主題的ソナタ形式における二つの主題(あるいは三つの主題)は、相互に何らかの意味で対立的であることが多く、そのために仲介役としての経過の役割や、展開部における両主題の葛藤する興味もあるわけです。おおむね、律動的な第1主題(主要主題)と歌謡的な第2主題(副次主題)とが対立して提示されます。
――貴島 清彦「音楽の形式と分析」p. 181より抜粋

以上のように、主題の「対立」という言葉が使われていることがわかります。

しかしながら、主題の対立と言われても、具体的にどのように対立しているのかイメージが湧きづらいものです。

したがって、次章では提示部における主題の対立(or対比)の具体的な方法について確認していきましょう。

第1主題と第2主題を対比・対立させる方法とは?

ここからは、専門家の説明を引用しながら、第1主題と第2主題の対比・対立がどのように生み出されているのかを見ていきましょう。

調の変化

最も基本的な対比の技法として、異なる調を用いることが挙げられます。

この点については、武蔵野音楽大学で教鞭をとっていた門馬 直衛が「音楽形式」の中で言及しているので以下に引用します。

…この第二主題は、第一主題に対比していなければならない。そうでないと、その存在理由がなくなる。ソナータ形式では、二つの主題が相互に対比しているということが、重要な要件となつているのである。

この対比のためには、いろいろな手段がある。第一には、第二主題の調を第一主題と違えることである。
――門馬 直衛「音楽形式」p. 144~145より抜粋

具体的には、第1主題の調が楽曲の主調としての役割を果たします。

そして、一般的には第2主題は長調の場合には属調に、短調の場合には平行調に転調がなされます。

調が変化することで旋律に緊張が生まれますが、この転調による緊張が、2つの主題の対比を生み出しているのです。

曲想の違い

2つの主題を対比させる2つ目の方法として、異なった曲想を用いることが挙げられます。

この点に関しては、音楽家であり教育者であるWilliam Wielandがウェブサイトで言及しているので引用します。

Theme 2, the second theme or group of themes, is in the new key and is usually a lyrical contrast to the opening theme(s).

第2主題―2つ目の主題もしくは主題のまとまり―は調を新たにし、また、たいていの場合は第1主題と曲想的な対比を成す。

――William Wieland "Sonata Form" より抜粋

この点について、上述の貴島 清彦「音楽の形式と分析」の説明を再び見てみましょう。

完成された副主題的ソナタ形式における二つの主題(あるいは三つの主題)は、相互に何らかの意味で対立的であることが多く、そのために仲介役としての経過の役割や、展開部における両主題の葛藤する興味もあるわけです。おおむね、律動的な第1主題(主要主題)と歌謡的な第2主題(副次主題)とが対立して提示されます
――貴島 清彦「音楽の形式と分析」p. 181より抜粋

以上のように、第1主題と第2主題の雰囲気や性格を対照的なものにすることで、2つの主題を対比させることができます。

対照的な形の使用

また、2つの主題を対比させる方法として、2つの主題を対照的な形にすると言う方法も見られます。

以下の門馬 直衛「音楽形式」の記述から、具体例を見てみましょう。

ベートーヴェンの第一番ソナータ(ヘ短調)の第二主題〔第八八〕は、第一主題の和音的、上行的、スタッカート的なのと反対に、旋律的で、下行的で、レガートで、第一主題〔第八一〕によく対比しているが、そうかといって、第一主題と全然別なものではなくて、第一主題から装飾的な動機を取り去つて展開したものに他ならない。
――門馬 直衛「音楽形式」p. 145~146より抜粋

以上の例からは、ベートーヴェンが和音的・上行的・スタッカート的な第1主題に対して、旋律的・下行的・レガートな第2主題にすることで対比させていたことがわかります。

このように、主題の具体的な中身を対照的な形にしてしまうことで、2つの主題に対比・対立を生み出すことができるのです。

以上のように、ソナタ形式の提示部では、2つの主題を対比させるために、調を変化させたり、異なる曲想を用いたり、対照的な形の主題を用いたり、様々な音楽的技法が用いられています。

ソナタ形式の展開を追えるようになってきたら、主題がどのように対比されているかにも目を向けてみましょう。

ソナタ形式の展開部での主題を変化させる技法とは?

ドレミ
ドレミ
このページでは、展開部において主題を変化させる具体的な技法についてまとめています♪

ソナタ形式の展開部に関する記述を読むと、「作曲家が自由に主題を変化させる部分」といったように、ざっくりと抽象的にしか説明されていない場合がほとんどです。

いったい、作曲家は具体的にどのような方法で主題を「展開」しているのでしょうか?

ここでは、展開部で用いられる、主題を変化させるための具体的な音楽技法について確認していきます。

まず、楽譜の読み方のスクール"MUSIC THEORY ACADEMY"は、主題を変化させる技法を以下のように列挙しています。

THE DEVELOPMENT
The key word to understanding the development is “Variation”.
The musical material that was introduced (“exposed”) in the exposition is reworked and extended through different musical techniques.
These composing techniques include:

  • Sequencing
  • Imitation
  • Augmentation and diminution
  • Modulation
  • Inversion
  • New rhythms

As a composer uses these techniques, the music develops.

展開部を理解するためのキーワードは「変化」である。
提示部で示された旋律的素材は、種々の音楽的技法によって変更・拡張される。このような作曲技法には、以下のようなものが含まれる。

  • 反復進行
  • 模造
  • 拡大と縮小
  • 転調
  • 転回
  • 新たなリズム

作曲家がこれらの技法を駆使することにより、旋律は展開される。

――MUSIC THEORY ACADEMY "Sonata Form" より抜粋

続いては、武蔵野音楽大学で教鞭をとっていた門馬 直衛 氏の著書「音楽形式」より引用したものです。

呈示部に続く展開部は、前に提示部に出た材料を展開するところである。この場合の展開というのは、前に出た材料に内在する楽想を十分に繰りひろげて示すことであつて、たゞ、材料を発展させるとか自由に処理するとか幻想的に書くとかいうのではない。けれども、こゝに作曲家の幻想と技巧が大に発揮されることは事実で、その点で、展開部は、ソナータ形式の中で最も緊張に富み、最も劇的で、音楽的に最も興味ある部分となっている。

展開の方法は、千態萬様である。しかし、その主なるものは、大體、次の通りであろう。(以下は見出しのみ抜粋)

  • 移調
  • 装飾
  • 調の変化
  • 和声の変化
  • 律動の変化
  • 拍子の変化
  • 速度を変える
  • 旋律の変形
  • 対位法の利用
  • 二重対位法の使用
  • カノンの使用
  • フーガの使用
  • 動機又は類似のものの新構成
  • 新材料の使用

――門馬 直衛「音楽形式」p. 148~155より抜粋。

上記の2つの説明からわかる通り、主題に変化をつけるための音楽技法は、バラエティに富んでいます。

反復したり、和声や旋律を展開させたり、移調したり、拍子を変えたり…。

複雑なものになると、対位法を用いたり、フーガを使用したり、作曲家たちは実に様々な方法で主題を変化させてきました。

ソナタ形式の構造を把握できるようになってきたら、ぜひ主題の変化にも着目してみてください!

ソナタ形式の再現部と提示部の違いは?

ドレミ
ドレミ
再現部では提示部の2つの主題が再登場するけど、じゃあ提示部と何が違うの?という疑問にお答えします♪

ソナタ形式の第1部分は「提示部」、第2部分は「展開部」、第3部分は再現部と呼ばれます。

提示部で2つの主題(=旋律のまとまり)を示し、展開部でそれらの主題を変化させ、再現部で再び提示部の2つの主題へと戻っていきます。

再現部の主題として提示部の2つの主題と同じものが用いられるのであれば、再現部は提示部と何が異なるのでしょうか?

この点については、ライヒテントリットの「音楽の形式」の中で説明されているので、以下に引用します。

ソナタ楽章の第3部分は、本質的に第1部分全体の繰り返しである。けれども今度は副楽節でや終楽章でも属調の代りに主調だけが使われる。従って、再現部では属調への転調が無くなるから、第1主題から副主題への導入は、第1部分のものとは違ってこなければならない。しかしこの必然的な差異の他に千篇一律で気の抜けた単なる繰返しの感じを起させないために、個々の場合にはしばしば他の変化も施される。音を忠実に繰り返すのではなく、種々な小さい変化を施しつゝ繰返すのが少なくとも芸術一般の法則である。最も重大なそして最も多い変化は、主題自身に関するものであって、展開部の継続と栄冠としての主題がどのように持ち出されるかという点にある。
――ライヒテントリット「音楽の形式」p. 126より抜粋

以上より、再現部の基本的な形は、主調が中心であることがわかります。

提示部では、第1主題が主調で示された後に、第2主題は属調もしくは平行調に転調されることが一般的でした。

しかしながら、再現部では典型的には、第1主題から第2主題にかけても、主調が続きます。

つまり、再現部は提示部のように転調を目指しているわけではないと言う点が、大きな違いなのです。

主調が基調の再現部に見られる変化は?

では、再現部が提示部のように第2主題での転調を目指さずに主調で終わろうとすることで、どのような変化が現れるのでしょうか。

再現部で見られるについ変化について、いくつか見ていきましょう。

転調を目指さない経過句

再現部は、提示部と異なり調がダイナミックに変わらないので、調の変化という点では提示部に見劣りします。

そこで、単調になってしまわないために、再現部では提示部のようなわかりやすい転調以外の部分で、変化を追求します。

この点について、門馬 直衛「音楽形式」の中で再現部に見られる変化について言及されているので引用します。(再現部は「再示部」と表現されています)

再示部は、提示部の材料をもう一度示すところである。しかし、提示部と全く同じものではなくて、可成り違っている。第一には、こゝでは、二つの主題の間には、調の対立がなく、主題は両方とも、――少なくとも、原則上では――基調になつている。いうまでもなく、全体を円満に終わらせるためである。従つて、第二には、二つの主題の間の経過句も変つている。というのは、経過句は、こゝでは、別の調の第二主題に調を導いてゆく必要がないからである。
――門馬 直衛「音楽形式」p. 155より抜粋

「音楽形式」の中では、再現部における経過句の違いについて触れられています。

もともと提示部の経過句は、第1主題から第2主題へと転調するための移行部分という役割を果たす部分です。

しかしながら、再現部では第1主題も第2主題も(基本的には)主調であるため、転調のための移行部分が必ずしも必要ではないのです。

そのため、再現部の経過句は、提示部の経過句とは様相が異なる場合が多くなります。

多くの場合、再現部の経過句は提示部の経過句より短くなります。中には経過句が省略されているものさえあります。

提示部との差異を持たせるための変化の技法

以上のように、第1主題・第2主題ともに主調を基調としているために、再現部では経過句の必要性が低下しています。

また、あからさまな転調を伴わないために、転調以外の技法での変化が大きく見られます。

この点について、門馬直衛「音楽形式」の再示部の箇所で言及されているので、数か所に分けて要点を引用します。

  • また、再示部に出る第一主題が、材料や構成の点でも、提示部の時と多少違つていることがある。例えば、主題を別の音色(楽器・楽器構成・音域)で出したり(ベートーヴェンの第一交響曲の第一楽章)、多少装飾したり(ベートーヴエンの『田園ソナータ』)、新しい対位法を伴ったりすることである。
  • 或は、また、主題の構造を変えることもあるモーツアルトのト長調のソナータ(K二八三)の第一楽章は、その立派な例である。その第一主題は。提示部では第十七小節まで続いているが、再示部では十二小節となつて(第七十三小説の後半から)、その構造も変つていて、主題の初めの四小節の後に、イ短調の連進となり、それから四小節の句が続いて終る。
  • また、主題の長さを変えることも少なくない。特に多いのは、これを短縮することである。今見たモーツアルトの例も、その一つであるが、同じようなことは、ベートーヴエンもしばしば行った。——中略――しかし、また、これと反対に、主題が延長されることもある。ベートーヴエンの『テンペスト・ソナータ』(作品三一の二)は、その一例で、元来は六小節しかなかつた主題を十小節としている。

――門馬 直衛「音楽形式」p. 156~157より抜粋

これに加え、ライヒテントリットは「音楽の形式」の中で、ベートーヴェンの第1C長調交響曲で「副楽節を効果的に引き入れる長い反復進行を新たに挿入」していることを指摘しています。

反復進行とは、ある旋律のまとまりが、音の高さを変えて何度も繰り返されることを表します。

以上を踏まえると、再現部で変化をつけるための技法は以下のようにまとめられるでしょう。

  • 主題の音色(楽器・音域など)を変える
  • 主題を装飾する
  • 主題に対位法を用いる
  • 主題の構造自体を変える
  • 主題の長さを変える
  • 主題を反復進行する

ここまでで確認してきたように、再現部は提示部の2つの主題を用いながらも、属調ではなく主調へと向かう点で異なります。

そのために、転調以外の様々な音楽技法を用いて提示部との違いを表現しようとしているのです。

ソナタ形式の全体像を把握できるようになったら、提示部の主題の対比の技法や展開部の主題の変化の技法だけでなく、再現部の提示部との差異を出すための技法にも着目してみましょう。

なお、ソナタ形式の詳しい意味や意義については以下のページをご参照ください。

また、以下のページでは、ソナタ形式に関する様々なトピックをまとめています。あわせてご参照ください。

ソナタ形式に関するトピックまとめ ソナタ形式とは=意味から構造や解説動画まで、ソナタ形式に関する様々なトピックをまとめています。クラシック音楽を理解するために避け...
参考文献

  • 貴島 清彦「音楽の形式と分析」(音楽之友社)1980.
  • フーゴ―・ライヒテントリット 著、橋本 清司 訳「音楽の形式」(音楽之友社)1955年.
  • 門馬 直衛「音楽形式」(音楽之友社)1949年.

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DoReMi
音楽系教育機関で音楽家の学習や演奏活動を支援しながら、ピアノやソルフェージュなど自身の音楽活動を継続しています。音楽学習者がつまずきやすい音楽の概念を読んで理解できるサイトを創りたいという思いから、「DoReMiOnline」を立ち上げました♪