ソナタ形式の定義と例外

ソナタ形式の定義と例外│ソナタ形式がわかりにくい理由

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ドレミ
ドレミ
このページでは、ソナタ形式の定義に当てはまらない楽曲が数多く存在する理由を説明します♪

ソナタ形式を学んで行くと、ソナタなのにソナタ形式の定義に当てはまらない曲に出会ったことはありませんか?

実は、ソナタ形式については様々な研究がなされてきましたが、その定義は全てのソナタをカバーするものではないのです。

このページでは、その理由についてまとめています。

ソナタ形式の定義には例外がある?ソナタ形式がわかりづらい理由

ソナタ形式を調べていると、曲によってはコーダがあったりなかったり、主題・モチーフがが1つしか登場しなかったり、再現部がなかったりと、基本の形に当てはまらない楽曲がたくさん見つかります。

そもそも、ソナタ形式の型の定義も、人によって様々で、文献などで調べても1つひとつ微妙に内容が違ったりします。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

その理由は、ソナタ形式が後付けで理論化されたものだからです。

ソナタ形式は、作曲家たちが生み出してきた数多のソナタを分析し、そこに共通点を見出すことで定義づけがなされてきたのです。

この点について、ノース・カロライナ大学の教授であり音楽学の専門家であるマーク・エヴァン・ボンズは「ソナタ形式の修辞学」の中で、以下のように述べている。

十八世紀にはソナタ形式の正式な定義はなかったので、学者たちが形式の本質的な特徴――すなわち形式のすべての現われに共通する特徴――をつきとめるのに相当な注意を向けてきたのも、もっともなことだった。実際、こうして形式を定義する要素を追求することは、アリストテレス自身がほかならぬ「形相eidos」そのものの概念を「各々の事物の本質」と定義したことを反映している。
――「ソナタ形式の修辞学」p. 50より抜粋。



ソナタ形式の修辞学 古典派の音楽形式論 [ マーク・エヴァン・ボンズ ]

しかしながら、100年以上の歴史のあるソナタの全てに当てはまるようルールや法則を見出すことは、不可能に近い作業です。

名作と呼ばれるような文章でも、すべて同じ構成で書かれているわけではないですよね?

音楽も同じで、あくまでも良い音楽を生み出そうと試行錯誤した結果、作曲家が似たような構成で作曲するようになったに過ぎないのです。

しかも、ソナタには長い歴史があるため、時間が経つにつれてその形が少しずつ変化していくのはごく自然なことでもあります。

つまり、ソナタ形式は、音楽の歴史の中で作曲家たちが器楽曲の理想の形を追求した結果として見られるようになった共通の型であり、全ての楽曲に当てはまるものではない、ということです。

そのため、ソナタ形式=100%この形である!と定義してしまうことは、楽曲を解釈する際に悪影響である可能性もあるのです。

この点についても、マーク・エヴァン・ボンズが「ソナタ形式の修辞学」の中で、ソナタ形式を定義することの限界について言及しています。

ソナタ形式の場合、事実上、形式を定義する要素を探求することが、十八世紀の形式概念の正確な再構築を妨げてきた。ソナタ形式を定義する必要があることは明らかである。しかし、この目的を追求する過程で心に留めておかなければならないのは、定義はその性質上、役割に限界があるということである。ソナタ形式のあらゆる現れ方に共通の要素をつきとめても、きわめて重要ではあるがたまたま形式定義的でない特徴を考慮に入れるのに、そのことが適切な枠組みを提供するわけではないのである。
――「ソナタ形式の修辞学」p. 50より抜粋。

これはつまり、ソナタ形式を定義することは意義あることではありますが、定義してしまうことで、定義に当てはまらない楽曲が持つ特徴に対する考察をかえって狭めてしまう可能性がある、ということです。

ソナタ形式の定義・共通のルールを踏まえて楽曲の個別的特徴に目を向けよう

もちろん、ソナタ形式を定義すること自体は、非常に意義深いことではあります。

しかしながら、楽曲など何らかの対象を考察する際には、定義が例外的な次章への考察を狭めてしまう可能性があることを、私たちは心の片隅にとどめておく必要があるでしょう。

この点について、ライヒテントリットは個々の楽曲におけるソナタ形式の個別的特徴に目を向けることの重要性に言及しています。

新しい古典派のソナタ形式 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの近世のソナタ形式は、ほぼ次の骨子をもっている。

――中略――

この基本の型は極く一般的なものである。個々のソナタは細かい点で多くは大いに違っている。ソナタ形式は重要であるから個々の要素を詳細に研究することが必要である。
――ライヒテントリット「音楽の形式」p. 105~106より抜粋。

これはすなわち、ソナタ形式はあくまでも数多のソナタに見られる共通の型を抽出したものを定義したものに過ぎないと言うことを念頭に置いたうえで、個々の楽曲が持つ個性的特徴に注目して分析したり演奏したりすることが大切であるということです。

以上の議論を踏まえたうえで、これからソナタと向き合っていく際には、ソナタ形式の定義や共通の特徴を踏まえた上で、作曲家が生み出したそれぞれの楽曲の個性についてもぜひ思いをめぐらせてみてください!

なお、ソナタ形式の全体的な意味や意義に関しては、こちらのページをあわせてご参照ください。

また、以下のページでは、ソナタ形式に関する様々なトピックをまとめています。あわせてご参照ください。

ソナタ形式に関するトピックまとめ ソナタ形式とは=意味から構造や解説動画まで、ソナタ形式に関する様々なトピックをまとめています。クラシック音楽を理解するために避け...
参考文献
  • 貴島 清彦「音楽の形式と分析」(音楽之友社)1980.
  • フーゴ―・ライヒテントリット 著、橋本 清司 訳「音楽の形式」(音楽之友社)1955年.
  • マーク・エヴァン・ボンズ 著、土田 英三郎 訳「ソナタ形式の修辞学」(音楽之友社)2018年.
  • 門馬 直衛「音楽形式」(音楽之友社)1949年.

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音楽系教育機関で音楽家の学習や演奏活動を支援しながら、ピアノやソルフェージュなど自身の音楽活動を継続しています。音楽学習者がつまずきやすい音楽の概念を読んで理解できるサイトを創りたいという思いから、「DoReMiOnline」を立ち上げました♪