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移動ドソルフェージュと固定ドソルフェージュの違い

固定ドと移動ドのイメージ画像

【「固定ドソルフェージュ」と「移動ドソルフェージュ」とは】
「固定ド」または「固定ド唱法」とは、音名(=音の「高さ」に対する名称)に基づく歌唱法のことである。絶対的な音の高さに基づくものであるため、「ドレミファソラシド」の位置は変化しない。

「移動ド」または「移動ド唱法」とは、階名(=音の「機能」に対する名称)に基づく歌唱法のことである。主音や調性に対する音の機能に基づくものであるため、主音の変化に伴って「ドレミファソラシド」の位置が移動する。

音楽の基礎トレーニングであるソルフェージュには、「固定ド(唱法)」に基づく方法と「移動ド(唱法)」に基づく方法の2種類があります。

それぞれにメリットとデメリットがあり、それを踏まえたうえで使い分ける必要があります。

本記事では、「固定ドソルフェージュ」と「移動ドソルフェージュ」それぞれの特徴について、2つを比較しながら紹介していきます。

具体例と意味を確認した後に、それぞれのメリットとデメリットについても解説します。

移動ドソルフェージュと固定ドソルフェージュとは

ソルフェージュとは、音を聴き取ったり、楽譜を見て歌ったりすることによって、音楽感覚、音楽理論、聴音能力、読譜・視唱能力 など、音楽の基礎体力を総合的に養うトレーニングのことを指します。

ソルフェージュでは、楽譜を見ながら、音を声に出して歌います。これを、「視唱ソルフェージュ」と言います。

視唱ソルフェージュを行う際には、「ド」の位置が移動しない「固定ド唱法」と、「ド」の位置が移動する「移動ド唱法」の2つの方法があります。

この「固定ド唱法」と「移動ド唱法」それぞれの目的や違いについて、以下で詳しく見ていきましょう。

固定ドソルフェージュとは何か

「固定ド」もしくは「固定ド唱法」とは、「ド」の位置を固定して歌う方法のことです

「ドレミファソラシ」の位置が固定されている歌い方と言い換えることができます。

「固定ドソルフェージュ」は、「階名」ではなく「音名」に基づいて歌う方法です

この「音名」についても簡単に確認しておきましょう。

「音名」とは、ある音の「高さ」に対してつけられた名称のことです。

たとえば、現代の西洋音楽では、440Hz(ヘルツ)の音の高さを「ラ」と定めています。

音名を図にすると、以下のようになります。

音名

「固定ドソルフェージュ」では、ドレミファソラシドの位置が変わらないため、主音や調などが変化しても、同じ高さの音であれば、音の呼び方が変わらないことが特徴です

移動ドソルフェージュとは何か

「移動ド」もしくは「移動ド唱法」とは、主音(=楽曲の主役となる音)の変化に伴って「ド」の位置が移動する歌い方のことです

「ドレミファソラシ」の位置が変化する歌い方と言い換えることができます。

「移動ドソルフェージュ」は、「音名」ではなく「階名」に基づいて歌う方法です

「階名」とは、ある音と主音との距離を表す呼称であり、楽曲の中でその音が果たす「機能」に焦点を当てた音の呼び方です。

主音の位置が変化するのに伴って、「ドレミファソラシド」の位置も変化するのが特徴です

階名では、(特に長音階の場合)音階の主音を、音の高さにかかわらず「ド」と呼びます。

そして、そこから「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」ずつ進んだものを、それぞれ「レミファソラシド」と呼びます。

そのため、音名の「ド」が主音の時には、音名の「ド」が階名の「ド」、音名の「ミ」が階名の「ミ」にあたります。

もしこれが、音名の「ソ」を主音とした場合、音名の「ソ」を階名の「ド」、音名の「シ」を階名の「ミ」と呼びます。

次節で、移動ド具体の具体例について、固定ドと比較しながら詳しく見ていきましょう。

具体例で比較する固定ドと移動ド

固定ドソルフェージュと移動ドソルフェージュをイメージで理解するために、音階を固定ドと移動ドで表したものを比較した具体例を見ていきましょう。

たとえば、音名の「ド」を主音とした長音階(ハ長調の音階)の場合を見てみましょう。これを五線上で表すと以下のように表されます。

ハ長調の音階

これを固定ドで表すとどうなるのでしょうか。以下は「ド」を主音とする長音階を固定ドで鍵盤上に表した図です。

ハ長調鍵盤図

「ド」を主音とした場合、固定ドソルフェージュでは、おなじみの「ドレミファソラシド」で表されます。移動ドの場合はどうでしょうか。

ハ長調鍵盤図

移動ドソルフェージュは主音を「ド」とするため、音名の「ド」が主音である場合、固定ドと移動ドの「ド」の位置が一致していることを意味します。

そのため、移動ドでも「ドレミファソラシド」となり、固定ドと同じ音階をつくります。

これが、音名の「レ」を主音とした音階(=ニ長調の音階)に変わるとどうなるでしょうか。五線上で表すと、以下のように表されます。

ニ長調の音階

これを固定ドで表すと、下図のようになります。

ニ長調の音階

音名の「レ」を主音とした場合、固定ドでは「レミファ♯ソラシド♯レ」と表されます。これが移動ドになるとどのように変化するかを見てみましょう。

ニ長調の階名

 

移動ドでは、主音が音名の「レ」の場合であっても、主音を「ド」と呼びます。そのため、固定ドでは「レミファ♯ソラシド♯レ」であったものが、移動ドでは「ドレミファソラシド」になるのです。

さらに移動して、主音を音名の「ミ」にした場合(=ホ長調の音階)を見てみましょう。五線上に表すと以下のようになります。

ホ長調の音階これを固定ドで表すと、以下のようになります。

固定ドのミ

音名の「ミ」を主音とした場合、固定ドでは「ミファ♯ソ♯ラシド♯レ♯ミ」と表されます。これが移動ドになるとどのように変化するかを見てみましょう。

移動ドのミ

移動ドでは、主音がの音の高さに関係なく、主音を「ド」と呼びます。そのため、固定ドでは「ミファ♯ソ♯ラシド♯レ♯ミ」であったものが、移動ドでは「ドレミファソラシド」と呼ばれます。

ここまで見てきたように、固定ドでは「ド」の位置が固定されています。そのため、主音が移動すると、音階が「ドレミファソラシド」「レミファ♯ソラシド♯レ」「ミファ♯ソ♯ラシド♯レ♯ミ」のように変化します。

一方で、移動ドでは「ド」の位置が主音の変化に伴って変化します。移動ドにおいては、いつでも主音から「ドレミファソラシド」の音階がつくられます。

では、なぜこのように複数の音の呼び方が存在するのでしょうか。

次章では、固定ドソルフェージュと移動ドソルフェージュそれぞれのメリットを見ることで、それぞれの唱法の存在意義を確認しておきましょう。

移動ドソルフェージュと固定ドソルフェージュのメリットとデメリット

固定ドと移動ドには、それぞれにメリットとデメリットがあります。本章でそれぞれについて確認してきましょう。

固定ドソルフェージュのメリットとデメリット

固定ドソルフェージュのメリットは、音の「高さ」に対する感覚がよく磨かれることです

固定ドでは、261.63Hzの高さの音=「ド」、440Hzの高さの音=「ラ」のように、音の高さと音の名前が必ず一致します。

様々な音の高さと、音の名前が一致している状態のことを「絶対音感」があると言います。音楽に関心のある方なら一度は聞いたことのある言葉ではないでしょうか。

固定ドソルフェージュのトレーニングを積むことによって、「絶対音感」が育つのです。

また、ある高さの音はいつでも同じ名称で呼ばれるため、移動ド唱法よりもシンプルです。そのため、音が飛んだり、転調が多かったりするような複雑な曲になっても、対応しやすいという利点が挙げられます。

 

一方で、固定ドソルフェージュのデメリットは、、移動ドと比較して、音の「機能」や「調性」に対する感覚が育ちにくいことにあります

固定ドはあくまで音の高さに基づいて行われるものであるため、主音や調が変わっても、歌い方が変化しません。

主音や調の変化に伴って音の呼び方を変える移動ドでは、音の「機能」に関する感覚を育てることができますが、固定ドはこの点で移動ドには劣ってしまうのです。

移動ドソルフェージュのメリットとデメリット

移動ドソルフェージュのメリットは、音の「機能」を深く理解できるようになることです

移動ドソルフェージュでは、いつでも主音(=曲のメインとなる音)は「ド」、属音・下属音(=主音と最も調和する音の1つ)は「ソ」・「ファ」、導音(=主音に向かっていく音)は「シ」と呼ばれます。

主音が変わると、属音や導音などの機能を持つ音の位置も変化します。

移動ドソルフェージュでは、このような主音の変化に伴う音の機能の変化を感覚的にとらえることができるようになります

このような音感を、固定ドの絶対音感に対して、「相対音感」と呼びます。

そして、移動ドは、「相対音感」が育ちやすいソルフェージュの方法であると言えます。

 

一方で、移動ドソルフェージュのデメリットは、複雑な曲に対応するのが困難なことです

移動ドソルフェージュでは、主音の変化が起こると、各音の位置も変化します。

そのため、転調が多くなるなどの理由で曲が複雑になればなるほど、音の位置を変化させることがむずかしくなります。

この点では、固定ドソルフェージュはいつでも同じ高さの音は同じ名前で呼ぶので、曲が複雑になったとしても対応が比較的容易であるといえます。

移動ドソルフェージュと固定ドソルフェージュを使い分けよう

ここまで確認してきたように、固定ドとには固定ドの、移動ドには移動ドの良さがあります。

固定ドソルフェージュは音の「高さ」に対する感覚がより育つのに対して、移動ドソルフェージュは音の「機能」に対する感覚がより育ちます

どちらの方がより優れているというわけではありません。それぞれの相対的なメリットとデメリットとを比較して、自分の目的に合った方法を選択したり組み合わせて利用するようにしましょう。

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