ソルフェージュ各論

ソルフェージュとリトミックの違いは「目的」にあった

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「ソルフェージュとは何か」に関して、「ソルフェージュとリトミックはどう違うの?」と疑問に思う方は少なくありません。

今回は、ソルフェージュについて、リトミックとの違いという視点から考えることによって、理解を深めていきましょう。

ソルフェージュとリトミック

まずは、ソルフェージュのおおまかな意味について確認しておきましょう。

ソルフェージュとは

ソルフェージュとは、音を聴き取ったり、楽譜を見てドレミで歌ったりすることによって、音楽感覚、音楽理論への理解、聴音能力、読譜・視唱能力 など、音楽の総合的な基礎能力を養うトレーニングのことを指します。

ソルフェージュの具体的な内容としては、演奏された曲を聴きとって楽譜にしたり(聴音)、楽譜を見ながら歌ったりします(視唱)。

ソルフェージュは、スポーツでいうランニングや筋トレのようなものです。

ソルフェージュをしたからといってピアノやバイオリンなどがすぐに弾けるようになるわけではありません。

しかしながら、何の楽器をやるにせよ、ソルフェージュをしているかどうかで、その後の音楽的能力やパフォーマンスには圧倒的な差が生まれてしまいます。

具体的には、ソルフェージュによって、音楽感覚や音楽理論への理解、聴音能力、読譜力、視唱能力などを育むことができます。

つまり、ソルフェージュとは、音楽の基礎体力をつくるトレーニングのことであり、音楽の能力を伸ばすことを目的とするものなのです。

リトミックとは何か

ソルフェージュと似た言葉に、「リトミック」という言葉があります。

リトミックとは一体どのようなものなのでしょうか?

武石宣子「リトミック教育―理論と実践―」では、リトミックの創始者であるダルクローズ(Emile Jaques-Dalcroze)の言葉を引用しながら、以下のように説明されています。

リトミックとは、身体のリズミカルな感覚を訓練し、あらゆる速度の変化や、強弱の変化を通し、それらのニュアンスの変化を正しく演行する能力を養う教育方法のことである。

この方法は、音楽と身体的表現を融合するシステムで行われ、単に知的なものだけで展開されるのではなく常に感覚を通した反応活動を伴って展開される。反応活動は思考力と密接に結びついた行動であり、感覚機能の鋭敏さによって左右される。感覚機能の発達は、10歳前後で止まり、固まってしまうという心理学的及び生理学的なデータが残されている。ゆえに、特に幼児期におけるリトミック活動が感覚機能を鋭敏にするために必要であることがわかる。

これらの感覚機能が鋭敏になることによって、集中力、直観力、記憶力、想像力、創造力などの活動を高めることの助けになる。そして、全ての束縛から解放され、芸術的な感動を持つことになる。
――武石宣子「リトミック教育―理論と実践―」(相川書房)2010年 より引用

また、以下はダルクローズのリトミックに基づく教育を展開する”The Dalcroze Institute”のリトミックに関する説明をを日本語に訳したものである。

ダルクローズのリトミックは、身体的動作に基づく能動的な音楽教育法である。生徒(子ども もしくは 専門家)は、音に合わせた動作を通じて感知するものや指導者が奏でるリズムを感じ取るように導かれる。

…中略…

ダルクローズの方法論は、無自覚な場合もあるが、子どもたちの中で、音楽の学習過程の範囲内に限定されない幅広い領域で役立つ、基礎的な聴力や運動能力、社会性の発育を促進する。

…中略…

生徒は、五線上の記号を分析したり演奏したりする中での、音に合わせた即興や運動を通して、能動的に楽しみながら音楽を含む基礎的能力を上手く使うように誘引される。

…中略…

生徒は学習過程で、既知のものから未知のものへ、簡単なものから困難なものへと導かれる。そして、生徒はレッスンを通して、以下のような一生涯役立つ能力を開花させることができるのである。

・音楽性や、リズム感、運動能力
・想像性や創造性
・社会性
・公の場での平静
・精神的な均衡と落ち着き
・知的・身体的敏捷性
・集中力

――Jaques-Dalcroze Institute”what is eurhythmics?”(https://www.dalcroze.ch/english/what-is-eurhythmics/)より翻訳・抜粋。

これらをまとめると、リトミックとは、概ね以下のように説明できます。

リトミックとは、音楽と身体的表現を融合させることによって、リズムの感覚を養う音楽教育の一方法です。

リトミックの、音に対する身体的な反応によって磨かれる感覚機能は、思考力と密接に結びついています。

子どもは、リトミックを通じて感覚機能が発達することによって、生涯にわたって役立つヒューマンスキルをも身につけることができます。

つまり、リトミックは、音楽と身体的な動作を組み合わせることによって、ヒューマンスキルを養成することを出発点としているのです。

ソルフェージュとリトミックの違いは「目的」にあった

では、以上を踏まえて「ソルフェージュ」と「リトミック」の違いを考察していきましょう。

結論から言えば、ソルフェージュとリトミックの大きな違いは、それぞれの「目的」にあります。

ソルフェージュの目的|音楽それ自体が目的

ソルフェージュの目的は、「音楽の総合的な基礎力を育てること」にあります。

ソルフェージュは、聴音や視唱などを行うという意味で、音楽が手段でもあります。

すなわち、ソルフェージュにおいては、音楽は「手段」であり、「目的」でもある、ということです。

つまり、ソルフェージュは、聴音や視唱などの音楽という手段を用いて、音楽の能力を伸ばすことを目的としているのです。

リトミックの目的|音楽は手段

一方で、リトミックの目的は、音楽と身体的動作を組み合わせることによって、感覚機能の発達に伴うヒューマンスキルの向上にあります。

ダルクローズのリトミックの出発点は、音楽を教育に取り入れることによって、子供たちの豊かな能力を引き出そうという思いがあったのです。

つまり、音楽はあくまでも手段であって、目的ではありません。

この点が、音楽の向上を目的とするソルフェージュとの最も大きな違いなのです。

ソルフェージュとリトミックの違いを踏まえて言葉を使い分けよう

以上のように、ソルフェージュとリトミックの大きな違いは、音楽が目的であるのか手段であるのかという点にあります。

しかしながら、リトミックも音楽の基礎能力を全く目指していないわけではありません。

ただ、それ以外のヒューマンスキルの育成も主たる目的としてあるということは、必ず押さえておきたいポイントです。

一方で、ソルフェージュとリトミックを同じような意味で使っている方もたくさんいます。

また、リトミックを応用したソルフェージュを展開しているような音楽教室もあります。

つまり、ソルフェージュとリトミックは目的に違いがあれど、重なる部分もたくさんあるのです。

したがって、ソルフェージュとリトミックのおおまかな違いを念頭に置きながら、言葉を使う相手がどう解釈しているかによって、使い分けていく意識を持つことが大切なのではないでしょうか、

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